大学駅伝強豪校の監督の著書まとめ

解説・まとめ

年が明けて日本中が「箱根駅伝」で盛り上がっているので、僕がこれまでに読んだ、大学駅伝強豪校の監督の著書を紹介したい。ビジネスパーソンが読んでも学びがあるので、ぜひ多くの人に読んでほしい。

この記事の目次

勝ち続ける理由(青山学院大学・原監督)

勝ち続ける理由』は、青山学院大学陸上競技部の原 晋(はら すすむ)監督の著書。2004年に監督に就任し、2015年に同校を箱根駅伝初優勝に導く。本書は、青学が箱根駅伝連覇と39年ぶりの完全優勝を達成した2016年に出版された。

原監督はテレビや雑誌で見かけることが多く、大学駅伝の監督の中でもメディアの露出頻度がズバ抜けて高い。「タレント気取り」を批判する声もあるが、原監督はまったく意に介さない。それが彼の戦略だからだ。本書では次のように語っている。

私はそんなバッシングなどに一切、怯まない。それは、陸上界をもっと華やかな世界にするという大義があるからだ。この大義があるから、優勝監督としてテレビに出たり、新聞・雑誌のインタビューに答えたりして陸上競技の魅力をアピールしてきた。

陸上競技の魅力をアピールすれば、良い選手が集まる。良い選手が集まれば、チームが強くなる。また、チームが全国的に有名になれば選手のモチベーションもアップする。非常に良く考えられたPR戦略だと思う。

本書では、選手の指導方法についても紹介している。「目標管理シート」というツールを用いて、チームと個人の目標を言語化しているという。ビジネスの世界に通じるものがあるが、これは原監督のビジネスマン時代の経験が生かされているのかもしれない。

その1秒をけずりだせ 駅伝・東洋大スピリッツ(東洋大学・酒井監督)

その1秒をけずりだせ 駅伝・東洋大スピリッツ』は、東洋大学陸上競技部長距離部門の酒井 俊幸(さかい としゆき)監督の著書。2009年に監督に就任し、箱根駅伝では2010年、2012年、2014年に同校を優勝に導いている。本書は、監督就任後3度目の優勝を達成した2014年に出版された。

箱根駅伝を走るランナーは大学生なので、日中は学業をこなす必要がある。彼らにとって練習は大事だが、勉強も大事だ。この部活動と学業を両立させる「タイムマネジメント」こそ、東洋大陸上競技部の強みだと酒井監督は語る。そして限られた時間を有効活用するために行っているのが「朝練習」だ。

朝早くから始めるメリットはたくさんある。練習の幅が広がるし、普段から朝練習を早く始める習慣があると、合宿期間中も時間を有効に使える。これが大会に好影響を与えていると思う。朝練習は、東洋大陸上競技部の生命線でもある。

練習でもレースでも「1秒を削りだす」のは当たり前だが、東洋大学では練習時間を1秒でも多く削りだす努力をしている。

前に進む力―Keep Going(東海大学・両角監督)

前に進む力―Keep Going』は、東海大学陸上競技部駅伝チームの両角 速(もろずみ はやみ)監督の著書。2011年に母校の監督に就任。本書は同校初の箱根駅伝優勝を達成した2019年に出版された。

長距離陸上で一流を目指したいのであれば、練習以前に生活習慣から改めなければいけないと両角監督は言う。

陸上競技の長距離種目というのは、日々の生活がパフォーマンスに大きく影響する。どれほど結びついているか。それはもう100%と言っていい。

特に重視しているのが睡眠時間。睡眠不足は体調不良になりやすいので、選手には8時間は寝るように指導しているという。学生寮では22時に点呼をとり、合宿では夜更かしさせないように21時にスマートフォンを回収するという徹底ぶりが紹介されている。

ストイックな生活習慣を身に付けることで体の感覚を研ぎ澄ませていくのが両角スタイル。両角監督の佐久長聖高校駅伝部時代の教え子であった大迫 傑選手の練習スタイルに通じるものがある。

駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか(駒澤大学・大八木監督)

駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか』は、駒沢大学陸上競技部の大八木 弘明(おおやぎ ひろあき)監督の著書。1995年に母校・駒沢大学陸上競技部コーチに就任し、2004年から監督を務める。本書は2015年に出版された。

本書は学生への指導法よりも、自身の生い立ちについて多くのページを割いている。大八木監督は、勤労学生として市役所に勤めながら駒澤大学の夜間部で学び、箱根駅伝に向けて日々練習を重ねてきた苦労人。仕事も勉強もランニングも妥協せず、1年時と3年時に箱根駅伝で区間賞を獲得するなど輝かしい実績を残している。

本書で繰り返し語られるのは、人と人の「縁」の大切さ。特に高校時代の恩師、山田先生について回想する箇所は読んでいて感動する。

山田先生のおかげで、私の人生は大きく舵を切ることができたのである。私が最もきつかったとき、最も悩んでいた時期に、就職を世話してくれた山田先生への感謝の気持ちは、一生忘れることはない。

「男だろ!」と選手に檄を飛ばすことで有名な大八木監督だが、厳しい言葉の裏に秘められた熱い想いと選手への愛情がひしひしと伝わってくる一冊だ。

自分流 駅伝・帝京大の育成力(帝京大学・中野監督)

自分流 駅伝・帝京大の育成力』は、帝京大学駅伝競走部の中野 孝行(なかの たかゆき)監督の著書。2005年に監督に就任し、2008年より12年連続でチームを箱根駅伝に導いている。本書は2018年に出版された。

他の駅伝強豪校とは異なり、(中野監督の言葉を借りれば)帝京大学の駅伝競走部は「雑草軍団」と呼ばれている。それは新人をスカウトする際、ルーキー選手は他の強豪校に取られてしまい、帝京大学に入学するのは高校時代にパッとしなかった選手が多いからだ。

ならば、入学後に伸びしろのある選手を見つけてくれば良い。そんな「ダイヤの原石」を見抜くために重視しているポイントは、過去に挫折を経験していることだと中野監督は語っている。

では、どんな点に着目してスカウトしているかというと、ひとつには悔しさを知っているかどうか、ということだ。

中野監督自身、若い頃は長距離ランナーとしてパッとせず、勤めていた企業が倒産して無職になったり、臨時職員として働いて生活費を稼いだり、苦労が続いたという。そんな状況でも、陸上の勉強だけは怠らなかった。そしてある時突然、帝京大の指導者にと声がかかり、人生の転機を迎える。

本書を読むと、一見パッとしない人間でも育て方一つで劇的に変われるということが分かり、いろんな意味で勇気づけられる。

この中で一番読みやすいのは原監督の『勝ち続ける理由』だと思う。ビジネスパーソンが読んでも学びが多い。

勝ち続ける理由